教室紹介

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ごあいさつ

整形外科学講座は初代竹光教授、先代松野教授のもと培われた伝統を受け継ぎ、更にレベルアップした整形外科治療を目指しております。診療の方向性としては「各専門グループの充実」を挙げております。上肢、下肢、脊椎、腫瘍、股関節疾患の各々専門的治療を行える施設として、自分の専門領域である股関節だけではなく、各グループの充実が、地域医療にとって重要であると考えます。竹光先生、松野先生のご努力で、当教室には各グループ間でバランスの良い連携をとりながら教室全体のレベルアップを図ってきた歴史があります。各グループの更なる充実を、第一に優先したいと思っております。

当大学は道北・道東地域における医学研究の拠点として期待され、「地域医療に根ざした医療、福祉の向上」を建学の理念に掲げて積極的に活動を展開してきました。生命と機能の重みに直結する地域医療をいかに守っていくかが、旭川医科大学に課せられた使命であるといっても過言ではありません。研究の歴史がありその土壌を備えた他の国立大学とは多くの点で異なっています。しかし、国立大学である限り、基礎および臨床研究は大きな任務であります。研究発表を行い、多くの方々からご批判を受け、それを医学の発展のため後世に残し、後進のための良い指針となることは大切なことです。

当科では2011年から2013年まで、インプラントー骨間の術後早期の強固な固着と生体為害性の低下の利点を持つ、新しいセメント非使用人工股関節の医師主導治験を行いました。この治験は北海道臨床開発機構(HTR)の「ゆるむ事のない人工関節開発へのブレークスルーの橋渡し研究」や、旭川医科大学の「独創性のある生命科学研究(プロジェクト研究)」などの支援の下に行い順調に終了して、製品化が認可されました。患者様の身体機能の長期維持に貢献できるよう、更に耐久性が向上した新しい人工股関節の早期製品化を目指したいと思います。

2004年に新医師臨床研修制度が導入され、当科も医師不足という深刻な問題を抱えることになりました。この制度により北海道の地域医療も大きな打撃を受けました。制度スタート前から卒業生が様々な大学病院以外の研修病院に出るようになり、大学の医局への入局者が減りました。また大学もある程度の規模の病院に医師を集約せざるを得ない状況になりました。地方の病院は全然医師が足りず、また大学も足りないので基幹病院に医師を派遣できない状況となりました。
しかし、近年は吉田学長の強いリーダーシップの下に入学試験の地域枠を拡大するなどの対策で、入局者が増加する良い傾向にあります。

大学の義務は、臨床、研究、教育の3つだと考えております。
これからも、下肢班の再生医療の研究、股関節班の生体力学的研究、上肢班の骨軟骨移植術や肩関節手術の研究、脊柱班の疫学や脊柱変形の研究、腫瘍班の集学的治療の研究など、当科が誇る数多くの基礎および臨床研究を更に前進・発展させていく所存です。

今後も教室の良き伝統を守りながら、更に教室が発展していくよう努力して行く所存です。地域医療の充実と新しい研究開発の両立は難しい点もありますが、大きな目標として精一杯努力する所存です。

尚一層のご指導とご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

旭川医科大学 整形外科学講座
教授 伊 藤  浩

教室の沿革


初代 竹光義治 教授
昭和50年4月〜平成8年3月

第二代 松野丈夫 教授
平成9年2月〜平成24年3月

 伊藤 浩 教授
平成24年5月〜

1975年4月、竹光義治先生が九州大学から初代教授として就任して、当教室が産声を上げ、1976年11月より大学付属病院での診療を開始した。1978年に初研修医が勤務、1979年に旭川医大1期生が教室員となり、脊柱、股関節、上肢、下肢各専門領域にて診療実績を重ねていく。

竹光初代教授が九州から北海道に赴任した際、腰曲がりの中高齢者が多いことに着目し、旭川、富良野、遠軽、芽室など道内各地で住民調査を開始した。その中で腰部変性後弯lumbar degenerative kyphosisという新たな病態を1988年に報告し、世界で初めて腰椎変性、背筋コンパートメン卜障害、骨粗鬆化など複合的な病態解明を行った。

1997年2月、松野丈夫先生が北大から第2代教授として就任し、骨軟部腫瘍と股関節の専門領域を深化させ、特に着任早々から国内・海外の骨軟部腫瘍症例の紹介が急増した。股関節疾患に対する人工関節は、当時海外製品が主流で、最も重要な関節面の研磨状態や軟骨に相当するポリエチレン品質に問題があったため、旭川医大独自の人工関節開発に着手し、人工関節講座も立ち上げて、「4-U」人工股関節を上梓した。松野教授自身Mayoクリニックなど米国での留学・診療経験が長かった経歴から、教室員の海外留学を積極的に薦め、就任後10名以上が米国等へ留学しており、整形外科領域最大の国際学会や国内学会での学会賞受賞者を輩出している。

2012年5月、松野先生と北大時代から共に股関節診療に携わってきた伊藤浩先生が、第3代教授に就任し、現在に至る。

伊藤浩教授は、松野先生(前旭川医大病院長)から引き続き、国内トップクラスの股関節診療、研究を精力的に進めている。先天性股関節脱臼など小児期からみられる股関節疾患に対する治療法や、厚労省研究班の難病にも指定される大腿骨頭壊死症に対する薬物治療の開発なども進んでいる。

従来型の人工関節では10-20年で入れ換えを要したが、当科で開発した「4-U」人工関節は長期間に渡る関節機能の改良が進み、一生入れ換えが不要な耐久性が期待されている。

人工関節講座とともに、基礎・臨床両面から、小児から高齢者まで広い年代に渡る股関節疾患の先進的治療を進めている。

初代の竹光先生(現大分整形外科病院顧問)がはじめた地域住民検診もコホート研究として継続されており、脊椎疾患の病態に関する旭川医大独自の研究成果は、欧米教科書でも多く引用されている。

伊藤教授は整形外科診療全般に積極的で、股、下肢、上肢、脊椎、骨軟部腫瘍の各専門分野の診療可能な基幹病院として、周辺地域医療を支える体制の維持拡充を図っている。道北道東中心に広がる関連病院は、各地域で中核的役割を担っており、教室員のやり繰りが厳しい中、各病院機能の維持改善に努めている。

整形外科医の派遣依頼は増加しており、広大な北海道の整形外科医療の質の維持向上も重要な使命と捉えて、教室一丸で粉骨砕身している。

教室の歴史

講座創生期 (1976年)
医局対抗野球大会 (1980年)
大学10周年記念誌用撮影 (1983年)
大学20周年記念誌用撮影 (1993年)
開講30周年記念パーティ (2006年)
第41回日本人工関節学会開催 (2011年)
伊藤浩教授就任記念 同門会忘年会 (2012年)